M&Aは終わってからが本番!? アーンアウト条項を徹底解説

Dec 4 / ザ・モデラズ

M&A取引におけるアーンアウト(Earn-Out)とは?

M&A取引において、企業の買収価格は取引の重要な側面です。しかし、買い手と売り手が対象企業の価値を評価する方法には大きな違いがある場合があります。この評価の差を埋め、双方の利益を一致させるためによく使用される手法の一つがアーンアウト(Earn-Out)です。

アーンアウトとは、買収された企業の将来の業績に基づいて売買代金の一部が決定される契約です。つまり、買い手は買収代金を全額前払いするのではなく、取引完了後、企業が特定の業績目標を達成した場合に、売り手に追加の報酬を支払うことを約束します。アーンアウトは、事業の将来の財務成績に対する不確実性がある場合によく利用されます。


アーンアウトはどのように機能するのか?


アーンアウトは、買収された企業が売り手に追加支払いを引き起こすために達成しなければならない特定の業績目標を含むことが一般的です。これらの目標は、さまざまな財務指標を基に設定されます。

- 売上:買収された企業が一定期間内に特定の売上目標を達成すると、売り手に追加支払いが行われます。

- EBITDA(税引前・税引後利息・減価償却前利益):EBITDAは収益性の尺度としてよく使われます。アーンアウトでは、企業が特定のEBITDA水準に到達してから、支払いが行われるように求めることができます。

- その他マイルストーン:目標には、新製品の発売、市場拡大目標の達成、特定の顧客基盤の確保といった非財務的な成果が含まれる場合もあります。

アーンアウトは通常、買収後1~3年間の一定期間にわたって構造化されます。支払いは、合意に基づき、現金、株式、またはその組み合わせで行われる場合があります。


アーンアウトの例


ある技術系スタートアップが、大手技術企業に買収される状況を想定してみましょう。このスタートアップの評価は主に、新しいソフトウェア製品を開発する可能性に基づいています。しかし、買い手はその製品がまだ開発中であり、その成功が不確実であることから、全額を前払いすることを躊躇しています。一方、売り手は製品の可能性に自信を持ち、その成功に対して報酬を受け取ることを望んでいます。

このような異なる視点を解決するため、取引にはアーンアウト条項が含まれます。買い手は買収時に1,000万ドルを支払い、さらに今後2年間以内に新しいソフトウェア製品が1,000万ドルの売上を達成した場合に、追加で500万ドルを支払うことに合意します。これにより、売り手は製品が成功した場合に利益を享受でき、買い手は製品が期待通りの成果を上げられなかった場合にリスクを軽減することができます。


アーンアウトの利点


1.評価のギャップを解消:アーンアウトの主な利点の一つは、買い手と売り手の評価ギャップを解消するのに役立つ点です。事業が成功すれば売り手は望む価値を実現でき、買い手は不確実な将来の業績に対して過剰な支払いを避けることができます。


2.利益の一致:アーンアウトは、買い手と売り手の利益を一致させます。売買代金の一部が将来の成功に依存するため、売り手は少なくともアーンアウト期間中、企業の成長に関与し努力する動機を持つことができます。


3.リスクの軽減:アーンアウトは、事業の実績に基づく売買代金の一部を条件付けることで、買い手のリスクを軽減するのに役立ちます。これは、将来の業績を予測しにくい技術系やバイオテクノロジーのような産業で特に有効で


アーンアウトの課題


1.成果測定に関する争い:アーンアウトは、買い手と売り手の間で争いを引き起こす可能性があります。特に成果をどのように測定するかが問題になることがあります。買収後に事業を管理する買い手が、意図的に(または意図せずに)アーンアウト目標の達成に影響を与える行動を取ることも考えられます。

2.複雑さ:アーンアウトは、成果指標をどのように測定し、報告するかについての詳細な合意を必要とするため、M&A取引に複雑さをもたらす可能性があります。双方が後の誤解を避けるために、条件について明確な理解を持つことが重要です。

3.潜在的な不一致:アーンアウトは利益を一致させることを目的としていますが、逆に対立を招く場合もあります。例えば、買い手は長期的な成長を優先する一方、売り手はアーンアウト目標を達成するために短期的な利益に注力する可能性があります。


結論

アーンアウトは、M&A取引において買い手と売り手の利益を一致させ、評価の違いを解消するための強力な手段です。事業の将来の成果と売買代金の一部を結びつけることで、アーンアウトは双方が買収のリスクと報酬を共有する仕組みを提供します。しかし、アーンアウトはその複雑さや争いのリスクも伴うため、双方が成果目標や報告メカニズムを明確に定義することが重要です。適切に活用されれば、アーンアウトは売り手が事業の価値を最大化しつつ、買い手が不確実性への備えをするためのウィンウィン(win-win)の状況を構築することができます。


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