コンサルティングのプロジェクトの種類
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今回のセッションでは、プロジェクトのさまざまな種類について見ていきます。コンサル会社のプロジェクトを分類する方法は無数にあります。プロジェクトの期間別に分けることもできますし、業界別に分類することもできます。または、クライアントの種類別に整理することも可能です。しかし、今回のセッションでは、プロジェクトをビジネス機能別、そして参画のタイプ別にどのように分類できるかについて考えてみたいと思います。この動画を最後まで見れば、プロジェクトの全体像をより分かりやすく理解できるはずです。では、さっそく見ていきましょう。
コンサルティングプロジェクトを分類する最も一般的な方法は、プロジェクトが扱うビジネス機能ごとに分けることです。企業の経営者たちは、経営を進める中でさまざまな課題に直面します。そして、コンサルタントは、こうした課題を解決するために存在するという話を以前にしました。では、具体的にどのような種類の課題を解決することになるのでしょうか?
第一に、戦略コンサルティングです。戦略コンサルは、企業の長期的な方向性を設定し、主要な意思決定を支援する役割を担います。例えば、ある電気自動車メーカーが東南アジア市場に進出しようとしていると仮定しましょう。コンサルティングチームは、現地の規制、市場需要、競合企業を分析し、企業が最適な決定を下せるようサポートします。これは新規市場開拓と呼ばれます。このほかにも新製品や新規事業に関するさまざまなプロジェクトが存在します。また、比較的少ないケースですが、M&A後のPost Merger Integrationや価格設定に関するプロジェクトもテーマになり得ます。
次に、戦略プロジェクトと並んで大きな割合を占めるOperationコンサルティングです。これは企業の内部プロセスを改善し、コスト削減を図ることに焦点を当てたものです。例えば、ある小売業者が物流コストを削減し、配送速度を向上させたいと考えたとしましょう。コンサルタントはサプライチェーンを分析し、倉庫運営や配送ネットワークの最適化を行い、コスト削減の方法を提案します。別の例として、自動車工場でリーン(Lean)生産方式を導入するプロジェクトもあります。これにより、不要なムダを省き、生産速度を向上させることが目的となります。
財務コンサルティングも重要な分野です。これは企業の財務戦略、コスト管理、投資判断を支援する役割を担います。投資銀行や会計法人が提供するアドバイザリーサービスと重複する領域もあるため、一般的なプロジェクトとしてはあまり見かけないかもしれません。仮に進める場合でも、異なる視点でアプローチし、ソリューションを提供することが求められるでしょう。伝統的な戦略コンサルティング会社よりも、BIG4などの会計法人を基盤としたファームや、ブティックコンサルティングファームが担当する可能性が高いです。
第四に、technology consultingです。ここには、さまざまなIT戦略、システム構築、digital transformationが含まれます。例えば、ある医療機関が新しいERPを導入し、患者の記録、請求、スケジュール管理を統合しようとしている場合、コンサルタントはシステムの設計や導入をサポートします。また、金融機関がサイバーセキュリティ評価を必要としている場合、コンサルティングチームはセキュリティの脆弱性を分析し、データを保護するためのソリューションを提案することもあります。この分野のプロジェクトは、より専門的な経験と知識が求められるため、通常は専門人材が多く関与する傾向があります。
最後に、HRおよび組織コンサルティングがあります。これは人材計画や組織再編を扱う分野です。例えば、あるグローバル銀行が今後5年間に必要な人材を予測し、従業員のデジタルスキルを強化するための研修プログラムを設計しようとしている場合、コンサルタントはそれに適した戦略を立案します。別の例として、石油・ガス企業が組織構造を再編しようとしている場合、報告体制を効率的に調整し、意思決定のスピードを向上させることを支援することもあります。一般的なコンサルティング会社も取り組むことができるプロジェクトですが、MercerのようなHR専門のコンサルティングファームが強みを発揮する分野です。
次に、コンサルティングプロジェクトを進め方の観点から分類 してみましょう。すべてのプロジェクトが同じ方法で運営されるわけではありません。あるプロジェクトでは戦略的なアドバイスのみを提供する場合もあれば、実行まで責任を負うケースもあります。このような要素によって、プロジェクトの総期間や単価が大きく異なることがあります。
第一に、アドバイザリープロジェクト、英語ではAdvisoryです。これはコンサルの本来の定義に最も合致し、伝統のある分野と言えるでしょう。こうしたプロジェクトは実行よりも戦略アドバイスを提供することが中心となります。例えば、ある SaaS スタートアップが市場進出戦略を策定するためにコンサルタントを雇ったとしましょう。コンサルタントは製品の価格設定、顧客セグメンテーション、販売チャネルの設定などの戦略を立案します。その後、プロジェクトが終了すれば、その結果に対する責任は最小限に留まります。そのため、プロジェクト期間は比較的短いですが、企業の未来に大きな影響を与える可能性があります。
次に、Implementationです。実行コンサルティング、またはオペレーションコンサルティングとも呼ばれる分野です。こうしたプロジェクトでは、コンサルタントが戦略策定だけでなく、実行まで関与します。例えば、ある小売銀行がレガシーシステムをクラウドベースに移行しようとした場合、コンサルタントは 戦略を策定するだけでなく、システム移行の管理まで直接担当することになります。また、製造業がリーン(Lean)プロセスを導入しようとする 場合、コンサルタントがワークフローを設計し、社員へのトレーニングまで実施することもあります。このように、企業のオペレーションに直接関与する形であり、プロジェクト期間も1年以上に及ぶケースも珍しくありません。個人的な感覚としても、世界的にこのタイプのプロジェクトが増加していると感じています。
Due Diligence、つまり企業実査プロジェクトも非常に重要です。これは、個人的に最も多く携わったプロジェクトでもあります。企業が M&Aなどの大規模な財務的意思決定を行う際には、徹底的な分析が必要です。その際、第三者として客観的な意見を提供するのがコンサルタントの役割です。
例えば、あるPEファンドが有望なスタートアップを買収しようとする 場合、コンサルタントはその企業の市場ポテンシャルや競争力を評価し、投資の可否を判断する支援を行います。一般企業がクライアントとなることもありますが、財務的投資を行うPEファンドが主要なクライアントとなることが非常に多いです。また、M&Aディールの特性上、プロジェクト期間は非常に短く、早ければ3週間程度で完了することもあります。
Turnaroundおよびリストラクチャリング、英語ではRestructuringプロジェクトは、経営難に直面している企業を支援することに特化したプロジェクトです。例えば、赤字を出している航空会社がコスト削減とオペレーションの効率化を図るためにコンサルタントを雇うことがあります。コンサルタントは不要なコストを削減し、最適な航空路線を分析し、サプライヤーとの契約を調整する戦略を提案します。また、ある ホテルチェーンが深刻な財務問題を抱えている 場合、コンサルタントは銀行や投資家と協力し、債務再編の計画を立案し、財務健全性を回復する支援を行います。業界ではこのようなプロジェクトを医者の手術に例えることがあり、企業にメス(ナイフ)を入れるという表現が使われることもあります。
最後に、ベンチマークプロジェクトがあります。これは 企業が競合他社と比較し、自社のパフォーマンスを分析する ためのプロジェクトです。例えば、ある製薬会社が自社のサプライチェーンの効率性が競合と比べてどの程度かを分析しようとする場合、コンサルタントは主要なKPIを比較し、改善策を提案します。また、金融サービス企業がITコストが競合よりも高いかどうかを評価し、最適なコスト構造を見出そうとする場合、コンサルタントは分析を通じてコスト削減の戦略を提示します。国内企業同士でベンチマークを行うこともありますが、特にグローバルコンサルティングファームでは、国際的なネットワークを活用し、異なる国の企業を比較するために用いられることが多いです。
もちろん、これ以外にもさまざまな種類のプロジェクトが存在し、実際のプロジェクトはこのように明確に分類されるわけではありません。例えば、戦略プロジェクトでありながらベンチマーク分析を行うケースもあります。しかし、この動画を通じて、コンサルタントがどのようなプロジェクトを手掛けるのかについて理解が深まったなら幸いです。では、次のセッションに進みましょう。
