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ここまで見てきたように、企業の成果を現金の流れだけで考えれば会計は非常に簡単でしょう。むしろ、会計という概念自体が存在しなかったかもしれないと思います。今回のセッションでは、4つの事例を通じて、現金の流れだけを利用した企業業績の測定にはどのような問題が生じるのかを見ていきたいと思います。
最初の事例です。自動車会社が12月に50,000ドルの車を販売したと想像してみましょう。しかし、顧客は現金で即座に支払ったわけではなく、カードを利用して決済しました。カードでの決済であるため、自動車会社の立場では翌年1月に清算を受けることになります。このような状況では、会社の12月の売上は50,000ドルと見るべきでしょうか、それとも0ドルと見るべきでしょうか?もし皆さんが真剣にこの会社の12月の成績表を作るとしたら、この50,000ドルを12月の実績に含めたいですか、それとも1月の実績に含めたいですか?普通は、12月にはまだ現金を受けていない状態であっても、12月の実績として見るのが妥当だと考えますね。
次の事例を見てみましょう。私はある会社の経営者で、従業員の給料日になりました。ただし、働いた経験がある方ならご存知のように、会社が給料を毎日支払うことはありませんよね?場合によっては、1月に働いた分の給料が2月中旬に振り込まれることもよくあります。従業員にとっては不満があるかもしれませんが、会社にとってはかなりメリットが大きい状況です。このような場合、従業員の給与3百万ドルは1月に記録するべきでしょうか?それとも、実際に現金が出ていく2月に記録するべきでしょうか?これは非常に悩ましい問題です。
3つ目の事例は、明確な答えを出すのが難しいかもしれません。例えば、私が中国の工場から服を仕入れて、自宅近くの小さな店舗で服を販売していると想像してみてください。1月に100万ドル分の服を仕入れたものの、実際に販売が始まるのは2月以降だとします。この場合、この仕入れにかかった100万ドルは1月の費用として計上するのでしょうか?それとも2月以降の費用として計上するべきでしょうか?先ほどの2つの事例より混乱するかもしれません。 まず、結論を申し上げると、この100万ドルの費用は、実際に服が販売された月に、それぞれ費用として認識されます。この点については、後ほど詳しく学ぶことにしましょう。
次は再び自動車会社の話です。この会社の3年間の成績表を見ると、非常に好調であることがわかります。売上高は毎年倍増しており、費用もそれに合わせて増加しているため、結果として利益は70、140、300といった形で大きく成長しています。しかし、2024年にこの会社は将来さらに多くの車を販売するために、500をかけて新しい工場を建設しました。これを現金の動きを基準にして成績表を作成すると、2024年の成績は費用が500追加するため、突然赤字になってしまいます。もし皆さんがこの会社を経営する経営者であれば、このような成績表は非常に不公平だと感じるでしょう。将来を見据えて大きな投資を行ったにもかかわらず、それを成績表にすぐ反映してしまうと、経営者は当然ながら投資に対して消極的になってしまうでしょう。
では、どうすれば良いのでしょうか?解決策としては、この500という費用を、今後10年間使用する工場に対する費用だとみなして、10で割り、毎年50ずつ費用処理を行うことです。これにより、合理的に会社の費用を測定することができます。こうすることで、会社の成績表が再び健全な状態に見えるようになります。
このように、会計では徹底的に合理的な立場で企業の成果を正確に測定しようと努めています。その過程で、実際の現金の流入および流出のタイミングとは異なる場合があります。キャッシュフロー計算書のように、現金の流れに基づいて考える方法を、現金主義、英語ではCash Basisと呼びます。一方で、先ほどのように合理的な成果測定を目指す方法を発生主義、Accrual Basisと呼びます。これから私たちが学ぶ会計では、発生主義の視点で考えることが非常に重要です。実際、今後私たちは発生主義の観点で作成された数多くの財務諸表を見て、分析し、互いに比較していくことになります。